MSXの高額ジャンクに手を出した話#3 FS-A1WX修復編

パターン剥離のFS-A1FXの修復に成功したのが前回まで。残ったFS-A1WXをどうするか。最初は基板互換なのを利用して、ROMやICを引っこ抜いてFXに挿しかえてWX化を、とも思ったんですが、5〜6個あるROMやICを全部抜いて挿しかえて、FXを無事に動作させられる自信はありませんし、残ったWXの基板が哀れすぎます。
どうすんべーとぐるぐる考えを巡らせながら、酷い状態になっているCXA1145周りをぼーっと眺めて、ふと「FXにROMやICを全部挿しかえるのと、このへんのパターン修復するのと、どっちが困難だろうか?」と思ってしまったのが運の尽き(結果からみればある意味運のツキとも言えますが)。

CXA1145のSOPパッケージICをハンダ付けするためのランドはごっそり削られていますが、その先の配線部分は割と単純で、削られたチップ周辺に悪くない状態で残っています。ランドに相当する部分を空中配線できれば*1修復可能かもしれない、ということで無謀にもWXの修復にチャレンジすることにしました。失敗しても当初の予定通りROMやICを引っこ抜くだけなので気楽なものです。
基本方針は前回と同じで、電解コンデンサはすべてソケットで挿すようにして、先にパターン剥離の修復に専念します。必要なICソケットの加工も、前回同様にサクサクと進めておきます。

コンデンサの除去もサクサク進めますが、ここでふとFXのものも含め2台分の大量のコンデンサに目が留まりました。

もともと今回のジャンク3台のうち、FS-A1STを除く2台は明らかに電解コンデンサの交換失敗でジャンク化していて、その時に付けられたであろう電解コンデンサは(パターンの状態はともかく)、正しい極性で基板上にハンダ付けされたままでした。よくよく考えると、このコンデンサの山は全部、通電は動作チェック時のみ(パターン剥離を考えると一部は未通電?)のほぼ新品なんじゃないかなと。極性が正しい以上、ダメージらしいダメージはリード線部分へのハンダごての熱くらいですが、それにしてもコンデンサ本体まで届いているとは思えません。まあとりあえずはパターン修復が先なので、再利用できるようにリード線に付着したハンダくずの除去とリード線を伸ばすくらいはやっておきます。
次はこれまた前回と同様に被害状況の確認。パターンが無事でそのままハンダ付けできるもの、軽微な剥離などで状態が悪いがそのままハンダ付けできそうなもの、剥離しているもの、と分類して表*2にします。今回はQ1のトランジスタ2SA933Sが抜かれているのに気付いたので、IC1のCXA1145と共に表に記載しておきます。合わせて足りないCXA1145M*3と2SA933Sはオンラインで注文。それぞれ別の1店舗でしか扱いが無かったのでちょっと面倒でしたが。

部品番号 仕様/名称 パターン状況
Q1 2SA933S △1端子状態悪
IC1 CXA1145M ×パターン全剥離
C2 470μF 6.3V 85℃ △片端子状態悪
C12 1μF 50V 85℃ ×片端子パターン剥離
C13 22μF 50V 85℃ ×片端子パターン剥離
C14 10μF 50V 85℃ △片端子状態悪
C18 470μF 6.3V 85℃ ×両端子パターン剥離
C20 22μF 50V 85℃ ×片端子パターン剥離
C25 470μF 6.3V 85℃ △両端子状態悪
C26 470μF 6.3V 85℃ ×両端子パターン剥離
C27 470μF 6.3V 85℃ ×片端子パターン剥離
C28 1μF 50V 85℃ ×片端子パターン剥離
C34 3300μF 25V 85℃
C35 470μF 35V 85℃
C36 470μF 35V 85℃
C41 470μF 6.3V 85℃ △両端子状態悪
C42 2.2μF 50V 85℃ ×片端子パターン剥離
C43 2.2μF 50V 85℃ △両端子状態悪
C45 2.2μF 50V 85℃
C46 2.2μF 50V 85℃ △片端子状態悪
C52 100μF 6.3V 85℃ ×両端子パターン剥離
C53 3300μF 10V 105℃
C55 1μF 50V 85℃
C57 3300μF 25V 85℃
C58 1000μF 6.3V 85℃
C63 470μF 6.3V 85℃
C64 1μF 50V 85℃
C70 470μF 6.3V 85℃
C71 470μF 6.3V 85℃
C84 470μF 6.3V 85℃
C85 2.2μF 50V 85℃ △片端子状態悪
C98 470μF 6.3V 85℃

表を作っていて思いましたが、CXA1145周辺を除いたとしてもFXの時より酷い状態ですね……。前オーナー?も懲りないというかなんというか。
まあそれはさておき。表を参考にいざハンダ付け地獄へ(またか)。今回は後にCXA1145周辺パターンの修復が控えているので、その際に配線が邪魔にならないよう、また細かい作業の練習も兼ねて、剥離パターンのすぐ傍にある糸のように細いパターンのレジストを剥いで、ラッピングワイヤ(の中の線)をハンダ付けして修復。ちなみに、盛られたハンダから糸くずのように出ている細い線が修復の跡。やっぱり拡大鏡が欲しい……。

さて。コンデンサの修復が一通り終わって、残すところはQ1のトランジスタとIC1のCXA1145だけになりました。修復はどうやろうかと、ここでもぐるぐる考えを巡らせます。
最初はただ元々のCXA1145の位置に接着剤か何かで固定して空中配線すればいいかと考えていたんですが、5本ほどCXA1145自身の下敷きになる場所に元の配線があるので、普通に配線するとチップが浮いて傾いてしまいますし、ハンダ付けポイントがチップの下なので、先にチップを固定しておくこともできません。ラッピングワイヤ(の中の線)でランド代わりになる配線をして固定し、その上にCXA1145を載せられれば均一に浮くので問題は起きませんが、配線の止め方がうまくないと上に乗せたICの足をハンダごてで加熱した時点でポロっと配線が外れそうです。ぐるぐるぐるぐる考えて、部品の到着を待てずしびれをきらせてランド代わり配線の作成をやっちゃいました。
周囲の配線のレジストを削り取って銅箔面を露出させ、その上にラッピングワイヤ(の中の線)を置いてハンダ付け、導通を確認したうえで瞬間接着剤で軽く固定*4して出来上がり。これをピンの数だけ繰り返します。そうやって出来上がったのがコレ。瞬間接着剤で固定してあるとはいえ、そもそも瞬間接着剤は熱に弱く、上にICを載せてハンダ付けのために加熱する以上、あまり期待はできません。あと、こういう細い足をハンダ付けするにはフラックスを使うのが定石らしいのですが……。

などと考えていたら、ここで問題発覚&トラブル発生。まず今まで使っていたハンダが鉛フリーのものだったことが発覚。昔に入手したであろうモノをガラクタ箱から引っ張り出して、何も疑わずに使っていたんですが、まさか融点が高く初心者には向かない鉛フリーハンダだったとは……。何やってるんだ昔の自分(苦笑)。先の瞬間接着剤の件もあって温度が高いのはわりと致命的です。続いてはCXA1145の注文確認メールが迷惑メール認定されていて届いていないことに気づきました。あわてて迷惑メールフォルダから救出して代金の振り込みなど急いで処理しましたが、これで2〜3日は到着が遅れます。部品の到着が遅れるならと諦めの境地で、鉛入りの普通のハンダ(今後もちょくちょく使いそうなのでリール巻きのちょっと量の多いヤツ)と、ついでに電子回路向けのフラックスも注文。到着待ちです。
ともあれ、なんとか遅れた部品も年内に届いてくれたので、先にトランジスタのハンダ付けを行って新しいハンダの様子を見つつ、いよいよCXA1145Mのハンダ付けにチャレンジです。先に作成してあるランドもどきの配線の上に届いたばかりのCXA1145Mチップを載せ、まず固定するためにパターンが残存していたGNDピン(写真の向きで一番左側の上下のピン)をハンダ付け。固定出来たら、これまた届いたばかりのフラックスをひと塗りして、ハンダごての先にちょっとハンダを付けてちょんちょんと突いてほかの足をハンダ付けしていきます。なんかハンダ付け中にも土台の配線がグラグラ左右に動いているのが見えてヒヤヒヤしましたが、全ピンハンダ付け終わって導通を確認したところセーフ! 全部元と同じに導通していました。ちなみに下側のピンが2本配線されていませんが、回路図では元々NC(未接続)だったのであえてパターンを用意していません。

あとは電解コンデンサをソケットに挿すだけです。再利用するかどうかで悩んで、この時点まで注文していなかったので、面倒になって最終的に再利用コースに決定(苦笑)。2台分の除去済み電解コンデンサから利用可能なもの(=リード線が十分な長さで残っているもの)を選別して、足の長さを適当に整えて、ソケットにサクサク挿していきます。
さて、いよいよ動作確認。基板だけの状態で、ATX電源ハーネスカートリッジを挿し、TVにビデオケーブルで繋いで、とここまでは前回と同様。ドキドキしながらスイッチをオン! 修復前は全く反応しなかったものが、オンと同時に画面が少し乱れて……よっしゃ!! 画面出た!! 俺スゲー!!(笑) と、思いっきり自画自賛しつつまたもガッツポーズ。いやいや、まさかICが1個まるごと剥がれている基板すら修復出来てしまうとは、この時まで思っていませんでした。電子工作スキルに関する自己評価をさらにちょっと上方修正です(笑)。

メイン基板が修復できたので、FXの時と同様に電源の話になるんですが。実はトランスの動作はFXの時に一緒に確認していて、同様に正常値っぽい電圧が出ているのを確認済み。スイッチとコードを用意すればWXも単体で電源が入るようになります。FXの時は手持ちのスイッチで適当に置き換えましたが、今回は元のスイッチに近いスイッチを入手出来たのでそれを使い、ついでにメガネケーブルインレットのコネクタも少し変えてちょっと加工し、ホットボンド盛り盛りで固定するのではなく、取り外しができるようにしてみました。スイッチのボタン部分は1cm角のひのきの棒に穴をあけてスイッチの先に押し込んであります。同様のものをプラスチックで作ればもっとマシになるはずですが、残念ながら1cm角のプラ棒は見つからなかったので木で代用です。「ごりぽんは ひのきのぼうを てにいれた」(笑)。

これでFS-A1WXもFS-A1FXと同様に、キーボードもFDDも無いものの単体で電源オンして動作させられるようになりました。フロントパネルの状態もFXと大差なし。FS-A1WSXのキーボードを取り付けて確認したところキーボードの動作も問題なし。しかし、キーボード無しの個体が2台になってしまった。キーボードどーすんべか……。

ここまで来たらFS-A1STも何とか修復して、ジャンク3台全修復を狙いたいところですが……。さすがに回路図もなくあてずっぽうでできる修復ではないですね。どこかにSTの回路図、もしくはそれに準ずる資料がないもんでしょうか……。

*1:FS-A1FXの修復でCXA1145の足にラッピングワイヤをハンダ付けしたのが根拠です。アレが伏線だったのです(苦笑)。

*2:例によってこの表は、FS-A1WXの電解コンデンサ+αの一覧表でもあります。電解コンデンサ一覧として見る場合はQ1の2SA933SとIC1のCXA1145は無視してください。

*3:シルク印刷されている「CXA1145P」というのは実はDIPパッケージの型番だったりします(苦笑)。実際に搭載されているSOPパッケージの型番は「CXA1145M」です。

*4:ちなみにレジストの上だと瞬間接着剤は効きません。怪我の功名というか、CXA1145周辺は基板の地が出るほど削られていたので瞬間接着剤が効く状態でした。