パナソニックMSX2+の乾電池をスーパーキャパシタで置き換える実験とその結果

今年最後の更新は、ジャンク弄りの延長でFS-A1FXの改造ネタ。実験の過程とうまくいった後の実際の改造についてです。記事に本体の改造方法を含みますが、十分な検証が行われている訳ではないので、何らかの危険がある場合や、改造した本体の寿命を縮める場合もあり得ます。無保証になりますので、改造する場合は各自自己責任で行ってください。
FS-A1FXもFS-A1WXもパターン剥離の修復がうまくいって動作するようになったんですが、どちらもバックアップ乾電池の電池ボックスの蓋が欠品していて、電池を入れることができません(入れてもちょっとしたショックで抜け落ちてしまう)。電池蓋を入手できれば一番良いんですが、もう入手も自作も難しい部品なので他の方法を考えないといけません。
どうせ電池ボックスが使えないなら、乾電池以外の何かでバックアップしてしまうのも手です。それで最初に考えたのがリチウム電池での置き換え。これは単純にリチウム電池の電池ボックスを用意して、配線をそちらに繋げばいいだけです。ただし電池交換が厄介。基本的には筐体内部に電池ボックスを置いて、交換時には筐体を開けて交換することになります。筐体に何らかの加工を施してそれ用の電池ボックスを用意すれば、筐体を開けずとも交換が可能なようにも出来るはずですが、ちょっと大事になりすぎます。
次に考えたのが、似非RAMなどでも使われているスーパーキャパシタ(ゴールドキャパシタとも呼ばれる・以下キャパシタ)を使ったバックアップ。似非RAMのものはキャパシタダイオードが1個ずつ使われた簡素な回路ですが、これをMSX本体のバックアップ電源として使えないかなと考えました。

うまくいけば本体の電源がオンの間に勝手に充電されるので、基本的に電池の交換は必要なく、筐体内部に入れておいても面倒なことにはなりません。MSX2+では*1電源オン時にESCキーを押していればバックアップの内容がクリアされるので、電池が抜けなくても問題は無いはずです。これはイケそうな予感。というわけでFX(というかWX)が回路図ではどうなっているのかと見てみれば……。

おぅふ……。まあ当たり前ではありますが、きっちりとリセットICやトランジスタを使ってバックアップ電源が組まれていて、かなり複雑な回路になっています。回路設計に関する知識は無いので、この回路を理解したうえで組み替えるというのは私には出来ません。何か取っ掛かりがあればなぁ、とぼーっと回路図を眺めていたんですが……そこでハタと閃きました。なんか似てる部分がある!?

WXのバッテリーバックアップ回路図のBVSSと、似非RAMのRAMのGNDピンが対応しているとすると、BVSSからD10を通ってGNDへ、同じくBVSSからD10の脇とD9を通って乾電池のマイナスへ、乾電池のプラスから5Vへ、と繋がる回路は、RAMのGNDピンからダイオードを通ってGNDへ、同じくRAMのGNDピンからダイオードの脇を通ってキャパシタのマイナスへ、キャパシタのプラスから5Vへ、と繋がる回路とそっくりです。唯一の違いはWXの回路図側に存在するD9のダイオード。乾電池を充電するような方向に電気が流れるのを止めるためのものではないかと推察しますが、キャパシタに置き換えるのであればむしろ充電してほしいので、このダイオードは不要なはずです。考えが正しいとすれば、D9をダイオードではなくただの配線に置き換えて、乾電池の代わりにキャパシタを繋げば、期待した動作が得られることになります。
何はともあれ試してみないとということで、秋月電子のWEBページで容量5F・耐圧5.4Vのスーパーキャパシタ*2をポチって入手。届いたキャパシタを乾電池の代わりに繋いで、一応それだけではバックアップが働いていないことを確認します。それでは実験! 適当な抵抗の足の切れ端を曲げて、D9と並列に繋がるように指で押さえながら、電源をオン! ……って? あちちちち!? 指で持っていた配線がいきなり熱くなって手を放してしまいました。もしかしてショートした? 本体へのダメージを心配しましたが、本体は何事も無かったかのように起動。一安心です。
しかし、配線が指を火傷するほど熱くなったわりに、本体へのダメージが全く見られません。また、その配線が熱くなった一瞬でキャパシタはかなり充電されたらしく、その後はキャパシタを乾電池の代わりに繋いだそのままの回路で、乾電池を繋いでいる時のようにバックアップが行われるようになりました。充電されないので、放電し切ったら終わりでしょうが……。
不思議に思って検索してみると、キャパシタに「電流制限抵抗」を付けないと「ショート同然の大電流で一気に急速充電されてしまう」との情報が。……あー。これだとすれば全て辻褄が合う。瞬間的に何アンペア流れたのかは判りませんが、少なめに見積もってもちょっとしたハンダごてくらいの発熱量になりそうですし(苦笑)、大電流が流れたものの動作としてはショートではなくキャパシタの急速充電なので、(大電流の分のダメージがある可能性は別として)本体側にそれらしきダメージが無いのも納得です。
ならば電流制限抵抗を付けてみようということで、抵抗値を計算します。乾電池が元なので最初は許容電流350mA・供給電圧1.5Vで計算していたんですが、よくよく考えると5Vに繋がっているので最大5Vで計算する必要があるのに気付きました。それにそのままの許容電流だと電力がかなり大きい(セメント抵抗が必要になる(苦笑))ことにも気づいたので、許容電流をかなり低く見積もって、68Ω(約73mA)ともうちょっとマージンを取って100Ω(50mA)の1/2Wのもの(計算上は100Ωの場合でちょうど1/4Wになる)を入手し、こんな感じの仮設回路(D9の足の隙間に抵抗の足を挿し込んである)で抵抗を取り替えながら引き続き実験です。最初期の急速充電が発生しないことを確認するため、一応キャパシタは放電*3させてあります。

ところが用意した2つの抵抗を使って接続してみると、特に発熱などは無いものの電源オンでも画面が出ません。多分、100Ωでも充電電流が大きすぎて、リセットICの影響で動作しなくなっているのかなと。仕方がないので510Ωくらいから100Ω〜50Ω刻みで1/4W抵抗(100Ωを超えているので1/4Wで大丈夫)をいくつか入手して、値が高いほうから順に接続して調べていくと、用意した最低ラインの150Ωでも普通に起動できてしまいました。あれれ? 68Ωと100Ωでは起動しなかったよね? と思ってもう一度やってみると、68Ωは相変わらず起動しませんが、100Ωだと今度は起動してしまいます。……あー。これは多分、抵抗の個体差(誤差±5%なので100Ωなら95Ωから105Ωまでの幅がある)で、例えば95Ωではダメで105ΩならOKとかそういう……。抵抗100本入りの袋からランダムに取り出して使っているのでそういうこともあり得ます。100Ωの個体差で可否が変わるのなら、おそらくは110Ωの抵抗なら低い側(110×0.95=104.5)に寄っても問題無いんでしょうが、手元にあるのが150Ωからですし、あえてギリギリを突き詰める意味も無いので、このままで行くことにしました。
最終的な回路としては、ダイオードのD9に並列で1/4W・150Ωの抵抗*4を接続したうえで、乾電池の部分をキャパシタに置き換えます。D9のダイオードは放電の際に役立っていそうな気がした(勘ですが)ので残します。なお、この状態で乾電池を繋ぐと、乾電池が充電状態になって、最悪の場合は乾電池が破裂する可能性があり危険です。絶対にやらないでください。

うっかり乾電池を繋いだりすると危険なので、改造しているのが一目で判るように、またすぐに戻せるように、あえて基板の表側でD9のダイオードに並列で抵抗を接続しました。あとは老朽化で芯線がボロボロになっていた乾電池への接続コードの被覆を剥きなおしてハンダ付けして、その先にキャパシタを繋ぎます。手持ちがないので出来ていませんが、キャパシタの足には熱収縮チューブでも被せておくべきでしょうね。

これでFS-A1FX(同じ基板のFS-A1WXも可能*5・FS-A1WSXは微妙に基板が違うため未検証)の乾電池をキャパシタに置き換える試みは一応成功にて終了。計算上は1時間ほど通電しておけば満充電になるはずです。満充電からどの程度の期間のバックアップが可能なのかはわかりません(確か対数関数なカーブになるので時間が経てば経つほど粘る(苦笑))。実験中に別途行った電圧の測定結果からすれば、少なめに見積もっても1か月やそこらは保つはずですが……。それと、最初に書いていますが、残念ながらこの回路に問題が無いのかどうかは、私に知識がないため検証できていません。どのくらい保つのか、またこの回路に問題が無いのかどうか、誰か検証してくれませんかね……(他力本願モード)。

*1:後の調査で少なくともFS-A1FXでは内蔵ソフトのINITエントリ内で処理されていることが判明。MSXシステムの機能じゃなかったのか。

*2:多分、容量1F・耐圧5.5Vのものでも問題無いはずですが、欲張って大容量を選択しました(苦笑)。ちなみに最近完成させた似非RAMに付けたのもコレですが、似非RAMには完全にオーバースペックですね。

*3:ググって見つかった「抵抗の代わりにはんだごてを繋ぐ」方法を使いました

*4:先に書いた通り110Ωあれば大丈夫で、抵抗値が大きい分にはキャパシタの充電時間が延びるだけなので入手しやすいものでOK。

*5:後日、同様の改造を施しましたが正常に動作しています。→http://d.hatena.ne.jp/goriponsoft/20190106/1546744023