ジャンクのMSX1を手に入れて修復した話

ヤフオクでジャンクMSXを捜索していると、目立つのはやっぱりMSX1。ヤフオクの出品を松下電器産業(現パナソニック)とカシオで二分しています。その中でも興味を引かれたのがカシオのPV-16。調べてみたところ徹底的なコストダウンの影響かシンプルな構造で、素のZ80(μPD780)とAY-3-8910が載っているうえに、CPU+メインRAM+メインROMが1枚のサブ基板として分離されてるとか、内部でスロットが全く拡張されていない*1とか、拡張ユニット「KB-7」用の専用スロットがあったりとか、なかなかに興味深い。MX-10系と比較して筐体が少し大きく内部の空間的に余裕がありそうだというのもポイント。
そう思ってヤフオクで捜索しなおすと、2K円で動作確認済みキーボード不良&電源状態悪な付属品無しPV-16が。それだけなら食指が動くことも無かったんですが、ちょうどヤフオクのキャンペーンで「50%オフ(上限1000円)」のチケットが使えたので、チケット適用で1000円ならいいかなと手を出した次第。
他の入札者も居なかったので競ることもなく無事落札。ただ誤算だったのは、チケットのおかげで本体は1K円になったものの、送料が850円も掛かって結局2K円近くなってしまったことでしょうか(苦笑)。まあ一応動作確認されているジャンクで送料込1850円ならまずまずの値段ではありますが。
さっそくATX電源ハーネスカートリッジで電源をオン!……のはずがなかなか電源が入らない*2。何度か繰り返してやっと電源が入ったので軽く動作チェック。キーボードは出品時の説明通りF5キー以外全滅。電源を繋ぐDCプラグも錆び錆びのうえグラついている感じです。まずは電源かなぁと思いつつ腑分けに入ります。

事前に調査した情報では、プラの筐体を内側の爪で引っ掛けて固定しているらしいので、隙間にマイナスドライバを押し込んで外していくと、何故か背面側が外れない。おかしいなと思ってよく見てみると、1つだけ開いている深い穴の底にネジが1本。これが原因で外れなかったらしい。そりゃネジ止めされてりゃ外れないよな……。ネジを外した後は筐体上面を手前に起こす感じで開き、両サイドにアースと思われる電線がねじ止めされているので外し、キーボードのケーブルも外します。

これで基板とご対面。大きなアルミの板は放熱板で、放熱板右上にちょこっと貼り付いている三端子レギュレータを冷却するためのもの。大げさなように見えて三端子レギュレータはすごく熱くなるのでこれくらいは必要だったりします。サブ基板は連結ピンヘッダにハンダ付けされているので簡単には外せません。

ざっと見ると、当然ながらいくつか電解コンデンサーが使われています。古い電解コンデンサーは容量抜けや液漏れで壊れていることが多々あるので、電源の状態が悪いこともあってまずはチェック。案の定と言うべきか、1つ液漏れしたらしき跡のある電解コンデンサーを発見。この1個は交換確定ですが、どうせ取り替えるなら全部やった方が良さそうです。ただ、全部となるとサブ基板上の電解コンデンサー(2個)も交換対象になりますが、流石にこの状態のままでは交換もままならないので、サブ基板を外すことにしました。

電解コンデンサーの交換なので例によって一覧を作成します。カシオだからなのか古いからなのか、電解コンデンサー含め部品に番号が振られていないので部品番号はありませんが、シルク印刷で電解コンデンサーの仕様が記載されているのでそれを採用します。製造メーカーの違う新しめのものや、シルク印刷に記載された仕様と違うものが載っているところがあったので、以前のオーナーが部分的に交換していた可能性を考慮して、シルク印刷優先で表にしました。

仕様 位置の目安(部品面から背面端子を上に見て)
100μF 25V 85℃ 電源スイッチ右
100μF 6.3V 85℃ RFモジュール左上
100μF 6.3V 85℃ RFモジュール左下
10μF 16V 85℃ ビデオコネクタ左
10μF 6.3V 85℃ RFモジュール左下
10μF 6.3V 85℃ VDP左上
1μF 25V 85℃ データレコーダコネクタ左
33μF 6.3V 85℃ VDP左
47μF 6.3V 85℃ スロット右
47μF 6.3V 85℃ ジョイスティックポート上
47μF 6.3V 85℃ 電源スイッチ下
47μF 6.3V 85℃ ジョイスティックポート下
47μF 6.3V 85℃ VDP下
47μF 6.3V 85℃ サブ基板内の左
47μF 6.3V 85℃ サブ基板内の右

全部で15個。パナソニックMSX2+では30個前後なので約半分です。これもコストダウンのためなんでしょうかね。一通り秋月電子の売場にストックされていたので、出来るだけワンランク上の105℃品でそろえてみました。今回はパターン剥離は無いので直接コンデンサをハンダ付けします。合わせて、同じく秋月電子にストックのあった三端子レギュレータとDCジャックも交換*3。交換できたところで、サブ基板(取り付ける向きとは逆)とセットで写真をパチリ。ちなみにこの時点で、サブ基板とメイン基板の接続はピンヘッダロングタイプのピンソケットに換装してあります。着脱自在です。

組み立ててATX電源ハーネスカートリッジで電源を入れると一発起動*4
この状態でキーボードの調子を見てみると、いくつか復活したキーがあるものの余り状況に変化は無し。またバラしてキーボード周りをチェックすると、ケーブルのコネクタがグラついているような? まあハンダ割れの可能性もあるしダメ元で、とハンダごてで加熱して再ハンダしてみたところ、とりあえず全部のキーが反応するようになりました。おお。
ただそれでもかなり強く押し込まないと反応しないキーもあるので、キーボードを分解清掃してみることに。ネジを外してバラしていき*5、埃や汚れを落として、定番?の「名刺程度の厚紙で全体的に軽く擦る」方法でキーボードのメンブレンシートを清掃し、組み立てなおしてチェック。すると、先ほどよりは良くなっているものの押し込まないとダメなキーがちらほら。改善はされているようなので、徹底的に清掃することにして、綿棒にアルコールを付けてメンブレンシートのキー部分を軽く丁寧に1キーずつ拭いていきます。フキフキ……。再度組み立てなおして確認すると、今までの鈍さが嘘のように軽く押しただけで入力ができるようになりました。おそらくこれが本来のキータッチなんでしょう。なかなか面白いです。

続いてACアダプタ。本体の表示を見るとDC 10Vが定格のようですが、先ほど交換した三端子レギュレータで5Vまで落としているので、5Vを超えていれば多少の差*6は無視できます。ただ「センターマイナス」のものとなるとあまり見当たらないので、仕方ないのでアマゾンで9V2Aの「センタープラス」のものを購入。これを改造することにしました。単純にDCジャックの配線をプラスマイナス逆に繋ぎなおすだけです。モノが電源関係なので多少慎重になる必要はありますが、ケースが開きさえすればそんなに難しくはありません。写真はすでに配線を繋ぎ直してあります。ケースを閉じて接着しなおせば完成。念のため仕様の書かれたシールのセンタープラス表示の部分は削っておきました。

改造したACアダプタを挿して、ついでに64KBのSRAMカートリッジも挿して、電源オン! 特に問題無く電源が入りMSX-BASICの画面に。ハードウェアが拡張されていないせいか、電源ONからBASIC画面に入るまでが妙に早い。SRAMカートリッジは16KB分の増設RAMカートリッジとして認識。残り48KBがきちんと動作しているかどうかはMSX-DOSでも起動してみないとわかりませんが、RAMカートリッジと似非RAM(もしくはFDD I/F)カートリッジを同時に使うためにはスロット増設が必須。拡張ユニットの「KB-7」が手に入れば良いのですが、単体では中々出てきませんし出てきても高価なことが多いのでなかなかそういう訳にもいきません。こりゃKB-7相当のハードを自作する*7しかないかな……。

*1:スロット#0のページ0~1がメインROMでページ3がRAM、スロット#1がカートリッジスロット1。スロット#2~#3は使われておらず拡張ユニットKB-7を接続するとそのままカートリッジスロット2と3として外に出てきます。

*2:後で判明したんですが、何故か自作のATX電源ハーネスカートリッジと相性が悪く、不調に関係なく電源が入りにくい状態でした。修理後でも同様。

*3:DCジャックを外そうとハンダを吸い取ったらDCジャックのパターンの一つが剥がれました(汗)。グラついてたのはこれが原因かもしれませんが……。慌てて修復したのは言うまでもありません(苦笑)。

*4:先に書いた通り相性の問題があったので、この時は単なる偶然だったということになります。

*5:何故かネット上で見つけられなかったPV-16のキーボード分解写真。実は貴重な画像かもしれません。

*6:ちなみに上限は三端子レギュレータの絶対定格である35V(念のためデータシートなどで確認を)ですが、あまり高い電圧だと放熱が追い付かなくなるので程々に。

*7:実はこの記事を書いている時点でおおよその回路設計は終わっていたりとか。ただしテキストで使うICと配線するピンを記載してあるだけなので回路図には程遠いですが。