MSXの高額ジャンクに手を出した話#2 FS-A1FX修復編

高額(になってしまった)MSXのジャンク3台セットに手を出して3台とも動かなかったのが前回まで。さすがに25K円出して全部ゴミってのは辛いのでちょっと頑張ってみることに。
今回手に入れたのはFS-A1FX、FS-A1WX、FS-A1STのジャンク。情報が無いSTは事実上修復不能なので置いておき、全回路図が公開されている*1FXかWXを何とかすることにしたんですが、前回書いた通りWXはコンデンサに加えてビデオエンコーダICであるCXA1145付近のパターンがごっそり削られていてひどい状態。なので可能性の高いFXを修復することにします。

まずは基本方針。電子工作は嫌いじゃないんですが、私のハンダ付けスキルレベルなんてたかが知れているので、コンデンサの足をハンダ付けしつつ配線も修復なんて荷が重すぎます。配線の修復に専念できるようコンデンサは後付けにしたいので、ソケットを使うことにしました。一応、コンデンサや抵抗などの足をそのまま挿せる専用のソケットも無い訳じゃないんですが、検索掛けても出てこないので個人で入手は難しそう。代わりに検索にヒットしたのは代用品としてIC用の1列の丸ピンソケットを使う例。今回はそれで行こうと思います。
最初は1ピンずつ切り離して使うつもりだったんですが、小さくなりすぎるのと固定に困りそうなので(両足のパターンが剥離している場合はハンダ付けで固定できない)、コンデンサの穴の幅に合わせて3ピンもしくは4ピンに切り、両端のピンを残して他は抜いたものを使うことにしました。コンデンサの個数分、ちまちまと作成します。

続いては基板からのコンデンサの除去。パターン剥離の被害状況(苦笑)を確認するためにも、コンデンサの足に付いているハンダはすべて除去する必要があります。ハンダ吸い取り器なんて便利なものは持ち合わせていないので、ハンダ吸い取り線でちまちまと外していきます。スルーホールでない両面基板なので吸い取り線でも十分。作業中、剥離してコンデンサの足にしかハンダが付いてないところがあったり、剥離を山盛りハンダでごまかそうとした後が見られたり、よほどハンダ付けに手間取ったのかすでに剥離寸前になっていてハンダ除去と同時にパターンも剥がれるところがあったりと、なんというかこの作業をした人のスキルレベルの低さが伺えます。リアルタイムでFS-A1STユーザーだった頃に、似たようなレベルでメインRAM増設しようとして本体を1台再起不能にした自分自身の若気の至りを思い出しますな(苦笑)。まあ、そんなこんなで除去終了。基板がスッキリしました。

次は被害状況の確認。パターンが無事でそのままハンダ付けできるもの、軽微な剥離などで状態が悪いがそのままハンダ付けできそうなもの、剥離しているもの、と分類して表*2にしました。この表を使って作業やチェックを行っていきます。(C109)が記載されているのは、前オーナー?が何故かコンデンサを取り付けていたから(苦笑)。FS-A1WX回路図を元に記載されているコンデンサの仕様と突き合わせて確認したので、最終的に回路図では載っていない(C109)はNCになっています。他のFS-A1FXの個体で実装されている例*3が見つかったため。注記に記載していた仕様も表に移してあります。

部品番号 仕様/名称 パターン状況
C2 470μF 6.3V 85℃ △両端子状態悪
C13 22μF 50V 85℃ △片端子状態悪
C14 10μF 50V 85℃ ×片端子パターン剥離
C18 470μF 6.3V 85℃ ×両端子パターン剥離
C20 22μF 50V 85℃ ×片端子パターン剥離
C25 470μF 6.3V 85℃ △片端子状態悪
C26 470μF 6.3V 85℃ ×両端子パターン剥離
C27 470μF 6.3V 85℃ ×両端子パターン剥離
C28 1μF 50V 85℃ ×両端子パターン剥離
C34 3300μF 25V 85℃
C35 470μF 35V 85℃
C36 470μF 35V 85℃
C41 470μF 6.3V 85℃
C42 2.2μF 50V 85℃ △片端子状態悪
C43 2.2μF 50V 85℃
C45 2.2μF 50V 85℃ ×両端子パターン剥離
C46 2.2μF 50V 85℃ ×片端子パターン剥離
C52 100μF 6.3V 85℃ ×両端子パターン剥離
C53 3300μF 10V 105℃
C55 1μF 50V 85℃
C57 3300μF 25V 85℃
C63 470μF 6.3V 85℃
C64 1μF 50V 85℃ △片端子状態悪
C70 470μF 6.3V 85℃
C71 470μF 6.3V 85℃
C84 470μF 6.3V 85℃
C85 2.2μF 50V 85℃
C98 470μF 6.3V 85℃
(C109) 10μF 50V 85℃

ちなみに余談ながら、両方の端子が剥離していた6個のコンデンサは、ことごとく映像音声出力関連でした。C27(R-OUT)、C26(G-OUT)、C18(B-OUT)、C52(CSYNC-OUT)のRGB出力、C45(PSG-SOUND)のサウンド出力、C28(CMTWR)のデータレコーダ出力と、おおよそ外に何かを出す信号が全滅です。これじゃあ画面も音も出ないのは当たり前。(故意ではないんでしょうが)映像音声出力に恨みでもあるのか(苦笑)ってほど徹底的に壊されていました。
それはまあさておき。用意もできたので、いざハンダ付け地獄へGO!!(苦笑) パターンが無事なところは作ったソケットをそのままハンダ付けして終了。軽微な剥離で状態が悪いところはちょっと多めにハンダを盛ります。片足が剥離しているところは生き残っている片足を先にハンダ付けして固定し、空中配線で回路を修復していきます。両足が剥離しているところは、両足とも空中配線で回路を修復した後、表側をホットボンドで固定します。念のため片足が剥離しているところも可能であればホットボンドで固定。全部で28か所×2ピン*4もあるので大変。基本は普通の1mmくらいの太さの線で、CXA1145の端子に繋がなければいけない3か所のみラッピングワイヤ(AWG30番)線で配線。ラッピングワイヤとCXA1145の足のハンダ付けが一番面倒でしたが(拡大鏡が欲しい(汗))、なんとか修復できました。

一晩明けて翌日。テスター片手にWX回路図を見つつ、修復したところが繋がるべきところに繋がっているかどうかを確認。1か所ハンダ付けが不十分で外れているのが見つかったので(苦笑)、慌ててハンダ付けしなおしましたが、その他は問題なし。この時点ではまだ注文した電解コンデンサ一式が届いていなかったので、到着を待つことになりました。
後日、コンデンサの方は配達時間にトラブル*5があったもののなんとか到着。電解コンデンサのリードをソケットに挿すのに必要な長さを残してカットし、プラスマイナスを間違えないようにサクサク挿していきます。ソケットのせいで背が高くなっているので、キーボードを付けた時*6にぶつからないようリードも短めに切ってギリギリまで挿し込みます。わりとプラプラしているので微妙に不安ですが*7、軽く上に引っ張って抜けないくらいには固定されているので気にしないことにします。
さて、いよいよ動作確認。基板だけの状態で、先に作っていたATX電源ハーネスカートリッジを挿し、TVにビデオケーブルで繋いで、どきどきしながら電源をオン! やった!! 画面出た!! 思わず声に出してガッツポーズしてしまいました。とりあえずメイン基板の修復は成功。まさか自分に剥離パターンの修復なんぞが出来るとは、この時まで思っていませんでした。電子工作スキルに関する自己評価をちょっと上方修正です(笑)。

メイン基板は復活したものの、このままではATX電源ハーネスカートリッジが無いと電源が入れられません。FS-A1WSXの例からしてもトランスは生きている可能性が高いので、筐体側に残されていたトランス(ACのコンセントに繋ぐケーブルもスイッチも取り外されている状態でしたが)にAC100Vを繋いで出力を確認すると、11Vと16Vが出ているのが確認できました。11Vと16Vってのは確か海外のサイトで見かけた正常値だったはず。試しにこの状態でメイン基板にトランスの出力側コネクタを接続してコンセントを挿してみると、ATX電源ハーネスカートリッジの場合と同様に起動してきました。おお、なんだやっぱりトランス生きてるじゃん。
コンセントのコードとスイッチを用意すれば普通に電源が入れられるので部品を調達してきました。コンセントの方は単純にコード繋ぐだけってのも味気ないので、メガネケーブルのインレットコネクタを繋いでメガネケーブルを用意。スイッチはスイッチに取り付けるプラスチックのボタン部品が無いためプッシュロックスイッチは諦め、手持ちにあったロッカスイッチに変更。適当に筐体側を加工してこれらのスイッチやコネクタが外に出せるようにしました。このまま筐体も開け閉めできますし、なかなかキレイに出来た*8んじゃないかと。

これでキーボードもFDDも無いものの単体で電源ONして動作させられるようになりました。フロントパネルはスイッチ類のプラスチック部品が外れていますが、インジケータLEDも連射スライダーもリセットスイッチも内蔵ソフトスイッチも、特に問題なく動作。WSXのキーボードを取り付けて確認したところキーボードの動作も問題なし。早くキーボードとFDDと、あと電池蓋が無いせいで電池を入れられないバッテリバックアップも、どうにかしてやりたいところです。

これにてFS-A1FX修復編はとりあえず終了(キーボードとかFDDとかバッテリバックアップ電池とかがどうにかなったら書くと思いますが)。実はまだこの「MSXの高額ジャンクに手を出した話」には続きがあるんですが、それについては現在進行形なので結果が出るまでしばしお待ちください。「FS-A1WX修復編」にて。

*1:作成者のBABAXさん&情報提供者のにがさんに大感謝!! その他協力者の方々にも感謝です。なお公開されている場所はこちら→https://green.ap.teacup.com/junker/172.html

*2:ちなみにコレ、FS-A1FXの電解コンデンサの一覧でもあります。電解コンデンサ交換の参考にどうぞ。

*3:こちら→http://usbsecretbase.michikusa.jp/a1fx_wx/index.html のページの「A1FXとA1WXの違い」の写真1枚目に写っています。

*4:ちなみに(C109)にも一応ソケットを付けました→後日コンデンサを実装している方が正しい可能性が出てきたのでコンデンサも挿してあります

*5:21日20時発送→22日4時(笑)にWEBから配達時間を午前中に変更依頼→22日8時に配達店到着するも時間変更を見落として保管→22日12時に配達中ステータスに(おそらくこの時点で時間変更に気づいた)→22日14時過ぎに配達、という流れでした。時間見落としについては配達員さんが自らゲロってたので間違いないです(苦笑)。

*6:まだ入手の目途が立ってないけどorz。

*7:挿し方にコツがあるのに後日気付きました。うまく挿すと結構がっちり固定されます。

*8:実はツイートで公開したものからスイッチやメガネケーブルインレットの傾きが修正されています(苦笑)。