ファミコン用「ジョイカードMk2」をMSX用のジョイパッドに改造してみる

MSX弄り始めてぼちぼち周辺機器もそろえようかなと思い立ち、まずはゲームをやるのにキーボードってのはちょっと厳しい*1ので、ジョイパッドでも手に入れようと考えました。とはいえ、悲しいかな流通量がそれほどでもなかったので、中古で流れているものは少ないうえに高額。まあ例によって自作でなんとかしてみようというエントリ。
自作でまず困るのが、そもそもジョイパッドを繋ぐケーブル、俗に言う「アタリ仕様ジョイスティックケーブル」が入手困難なこと。一応コネクタ的にはD-SUBの9ピンコネクタと同じですが、形状的にそのままではMSXジョイスティックポートには挿せません。まずはそこを何とか加工するところから始まります。運よくケーブルを手に入れられた場合は以下のケーブル加工は不要です。
一般的なケーブルにハンダ付けできるD-SUBの9ピンコネクタは、コネクタの周囲にねじ止めの穴が開いたフチが付いていて、コネクタを正面から見ると長方形になっているわけです。しかしMSXのコネクタの周囲はフチが無い前提のスペースしかないので、フチがぶつかってしまいます。

という訳でまずは最初にフチを切り落として引っかからないように加工。金ノコなどで余分を切り落としますが、大抵はフチの穴の部分で外装が圧着され固定されているので、そこを切り落とすと外装の金属部分がポロっと外れてしまいます。外れた外装を瞬間接着剤で接着して、ヤスリで削って形を整えます。今回は同じものを2つ作るのでコネクタも2つ。何気に力仕事なのでちょっと疲れました。

続いてケーブル。ケーブルは秋葉原の高架下にある「オヤイデ電気」さんで売っている「軟質シールド線」の8芯のものを使います。私はケチって1つあたり1メートルで合計2メートルにしましたが、シールド線なのである程度長くなっても大丈夫。2〜3メートルまでは許容範囲でしょう。被覆を剥いて、シールドはまとめて線にして、1ピンずつ先ほど加工したコネクタにハンダ付け。ちなみにオヤイデ電気さんの軟質シールド線は、抵抗などで使われているカラーコードと同じ色の線がまとめられていて、区別がつけやすくなっています。せっかく色分けされているので、判りやすいようカラーコード順をピンに合わせました。ピンとの対応は、1ピン:黒、2ピン:茶、3ピン:赤、4ピン:橙、5ピン:黄、6ピン:緑、7ピン:青、8ピン:白、9ピン:シールド、です。

半田付けできたら補強と絶縁を兼ねてホットボンドでガッチリと固定します。これならホットボンドで固めたあたりを持ってもコードを引っ張っても大丈夫。見た目はアレですが「アタリ仕様ジョイスティックケーブル」の代替品が完成。

ようやく準備が整ったので、ジョイパッド本体に取り掛かります。ゲームセンターグレードのボタンやレバーを組んでジョイスティックを完全自作してもいいですが、手間も費用も掛かるので手抜きして、他機種用のコントローラーを改造することにします。ちょうど秋葉原の「家電のケンちゃん」でファミコン用の「ジョイカードMk2」が大量に出ていたのでこれを使います。というか、ファミコンのコントローラーは間にシリアル・パラレル変換ICを挟む関係で改造しやすい構造になっているうえに、流通量がそこそこあるのでねらい目です。

ネジを外してパカっと開けるとなんだか懐かしい茶色の紙エポキシの片面基板とご対面。載っているICはシリアル・パラレル変換の4021と連射回路に使われている4069の2つ。MSX用に改造するにあたってファミコン用のケーブルとシリアル・パラレル変換ICは必要無いので取り外します。間違って連射回路用の4069を外さないように注意。ジョイカードMk2の場合十字ボタンの上にあるのが4021で、SELECT/STARTの上付近にあるのが4069です。なお、他のコントローラーでも4021を使っているものならほとんど同様に改造できます。

ジョイスティックケーブル側は9センチほど*2被覆を剥いて、シールド線はまとめて根元付近で切り4センチほどの線をハンダ付けしておきます。今回作成した代替品のようなシールド線では無い場合にはシールドの処理は不要です。

あとは対応する場所に接続してハンダ付けするだけです。写真のように置いたときに右の方からケーブルが来て基板の切り欠き部分で180度反転する感じで配線します。

配線は以下の通り。4021のピン番号がわからない人のために一応書いておくと、上の写真の向きで下段左から右へ1〜8、折り返して上段右から左へ9〜16です。+5VとGNDはケーブルの固定も兼ねてファミコン用ケーブルが繋がっていたパターンに配線していますが、カッコ書きしている4021のピンでも同じ場所に繋がっています。ジョイカードMk2以外のコントローラーを使う場合などに参考にしてください。

D-SUB9ピンのピン番号と内容 接続先
1(↑) 4021の4ピン
2(↓) 4021の5ピン
3(←) 4021の6ピン
4(→) 4021の7ピン
5(+5V) 「15ミドリ」のシルク印刷のパターン
(または4021の16ピン)
6(トリガA) 4021の1ピン
7(トリガB) 4021の15ピン
8(COMMON) 4021の2ピン*3
9(GND) 「1チャ」のシルク印刷のパターン
(または4021の8ピン)

MSXの標準仕様ではSELECT/STARTボタンは存在しないので、対応させなくても構わない場合にはこれで配線は終了。このエントリの最後の方に書いてあるケーブルの取り回しを見てふたを閉めてネジで止めればOK。その場合はSELECT/STARTは機能しないダミーのボタンになります。SELECT/STARTボタンをFM-TOWNS互換のSELECT/RUNボタン相当として動作をさせる場合は、さらに基板を加工します。SELECTは↑と↓の同時押し相当、RUNは←と→の同時押し相当なので、信号の回り込み防止のダイオードを経由してそれぞれのピンに接続します。

ダイオードのアノード・カソードをどちらに向けるかを含めた配線は以下の通り。十字ボタンの↑↓の2本がSELECTに、←→の2本がSTARTに、それぞれ繋がります。使ったダイオードは「1SS270A-E」ですが、手持ちがたまたまこ*4だっただけで、厳密にこれでないとダメというものではありません。ただ私は詳しくないので何なら良いのかまではわかりません(汗)が……。

アノード側 カソード側
4021の4ピン(↑) 4021の14ピン(SELECT)
4021の5ピン(↓) 4021の14ピン(SELECT)
4021の6ピン(←) 4021の13ピン(START)
4021の7ピン(→) 4021の13ピン(START)

これで一応SELECT/STARTボタンもFM-TOWNS互換のSELECT/RUNボタンとして動作するようになりました。先に書いた通りMSXの標準仕様では対応していませんが、一部の同人ソフトなどで対応している*5ものもあります。あとはケーブルをうまいこと押し込んでふたを閉めてねじ止めすればOK。写真のように元々のファミコン用ケーブルが通っていた穴に通して左に折り曲げ、折り返して4021の方向に向かわせます。ここで折り返すのに被覆が付いたままだと硬くて曲げられません。9センチの被覆剥きはここで意味が出てきます。

これでジョイカードMk2のMSX用ジョイパッドへの改造は終了。きちんと連射機能も生きているので、スイッチを切り替えれば使えます。我ながらなかなかうまくできました。ポイントはジョイスティックポート8ピンのCOMMON端子を使わずスイッチ類をGNDに接続したこと。このおかげでICとケーブルを抜く以外の加工が必要無くなって、連射回路もそのまま生かすことができました。

*1:キーボードでのプレイに命を懸けるキーボードerさんは置いておくとして……(苦笑)。

*2:ジョイカードMk2の場合わりとこの長さが重要なのできちんと測った方が良いです。

*3:今回8ピンの信号は使用しないのでショートしないよう他のどこにも繋がっていないこのピンに繋いでいます。ジョイカードMk2以外のコントローラーを改造する場合には注意が必要です。

*4:似非RAMのバックアップ回路用に使って余っていたもの。そもそも似非RAMで指定の「1S1588」が手に入らなかったので代替品。

*5:手前味噌ながら私が開発にかかわった「DM-SYSTEM2」の入力デバイス取得命令では読み取りできるようになっています。